『私のハーバル手帳』は、ハーブを使って健やかに暮らす知恵が詰まったミニブックシリーズです。
著者で鈴木ハーブ研究所の代表である鈴木さちよ自身が、茨城県東海村の自身のハーブガーデンで育てる500種類以上のハーブのなかからピックアップしてハーブの持つ効能や有効な使い方、栽培の基本とコツ、収穫方法、保存や利用方法などを紹介しています。
これらのハーブは元々、海外に自生する植物で、日本での育て方や取り入れ方にはちょっとした工夫が必要ですが、著者自身の長年の栽培経験やエピソードに基づいて、初心者でもわかりやすく丁寧に解説しています。
全巻にゆったりと美しいハーブの写真が掲載され、フォトブックとしても楽しめます。
さらに、表紙はガーデナーでイラストレーターの大野八生さんが、デザインはブックデザイン賞を受賞する十河岳男さんが手掛け、ミニブックながらページをめくって眺めるだけでも癒される美しい本に仕上がりました。
- 著者:鈴木さちよ
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鈴木ハーブ研究所代表。茨城県生まれ。幼い頃から植物に触れて育つ。
20代でハーブの有用性に関心を持ち、自身で栽培しながらアロマテラピーやメディカルハーブについて学び、日本メディカルハーブ協会ハーバルセラピスト、ナード・アロマテラピー協会アロマ・アドバイザーの資格を取得。海外の自生地を訪れたり、現地のハーブのあるライフスタイルを体験し、現在はそれらの知識を自社のスキンケア商品の製品づくりにも活かす。500種以上のハーブが香る庭の手入れも自身で行っている。
著者インタビュー
「この本が、健やかで穏やかに暮らすためのお守りになれば」と話す著者。本に込めた思いを聞きました。
(インタビュー/3and garden)
─────鈴木ハーブ研究所はこれまで、ハーブの力で肌を美しく健やかにするスキンケアコスメを開発されてきましたが、ご自身も長年ハーブを育てていらっしゃるんですね。
鈴木さちよ(以下省略):ええ。今回紹介したハーブはもちろん、庭では樹木や草花類を含め500種類以上のハーブを育てています。私にとってハーブは、今は仕事にもなっていますが、それ以前からライフスタイルの一つです。ハーブを育てて、収穫して、食べたり飲んだり、お風呂に入れたり、飾ったり、香りを利用したり、ということは会社ができるずっと前からしてきました。そもそも私はずっとこの茨城県の東海村で育って、祖母が畑をしていたので小さい頃から植物を育てて暮らすということは普通だったんです。庭に古い梅の木があるのですが、その花の香りで春が来たのを感じて、初夏には梅を収穫して梅酒にしたり、赤ジソを入れて梅干し作りをしたりというように、暮らしのなかにはいつも植物があり、その移り変わりがカレンダーのように身に染み込んでいました。そのカレンダーの中に、後からハーブが加わった感じです。
─────ハーブはいつ頃から?
ハーブには20代で出会ったのですが、その豊かで多種多様な香りとともに、何よりもそこにさまざまな作用があるということが新鮮でした。虫除けの効果があったり、頭をすっきりさせたり、気持ちを落ち着かせたり、痛みやかゆみを和らげたり…。今まで身近にあった植物が、こんなにすごい力を持っていたなんて! と、知れば知るほど興味がわきましたし、植物への見方がガラッと変わりました。きれいだとか美味しいとかいうだけでなく、偉大だなぁという尊敬の念を持つようになりました。植物は動物のように動けないので、長い進化の歴史の中で害虫や病気から自分自身を守る力や修復する力を獲得してきました。人も古くからその能力を知っていて、植物の力を借りて健康を維持したり、快適な暮らしをおくったりしてきたわけですが、現代では科学的な研究が進み、個々の植物の持っている成分や、その成分が人にどのように作用するのかということがどんどん解明されています。
─────鈴木さんはどうやってハーブを暮らしのなかで使っていらっしゃるのですか?
例えば本の中でも紹介したカモミールは、娘たちが小さい頃から眠る前にミルクティーにして飲んでいますね。カモミールの安眠作用はよく知られていますが、それだけじゃなくて喉がちょっと痛いなっていう、いわゆる風邪の初期症状のときにも有効です。その段階でカモミールティーを飲んでおくと、たいがい本格的な風邪に発展せずに済んでいますね。こういうふうに、はっきりと「病気」とまではいかないけれど、ちょっとあれ? っていう違和感を覚えることって日常的にありますよね。そういうときにハーブの力を借りるんです。身体の不調もそうですし、なんとなく不安感が強くなったり、眠れなくなったりすることって、誰にでもあるものです。そういうときに、自分でできる対処方法をもっていたら、むやみに不安にならなくて済みますよね。
─────確かに心強いですね。今は新型コロナウィルスのせいで、買い物一つとっても緊張を強いられるような日々が生まれていますから、漠然と不安を抱える人も多いですよね。
そうですね。ハーブは植物の中でも丈夫で育てやすい種類が多いので、庭や鉢で育てておけばいつでもすぐ手にとることができます。そういう身近なもので自分で自分をケアする術(すべ)を知っていれば、少なくとも不安から体調を崩すのは防げるわけです。予想外の事態というのは、どんな時代にも誰の人生にも起きると思いますが、そういうときに動揺するだけでなく、じゃあどうしたらいいのか、と次の一歩を考えるヒントを母親として娘たちにきちんと残しておきたいなと思ったのが、じつは本を作ろうと思った最初のきっかけなんです。
ちょっと話はそれますが、茨城県は水戸黄門様が有名ですが、黄門様の命によって水戸藩医がまとめた『救民妙薬集』という書物があります。これは医者に診てもらうことができない貧しい民のために、身近な植物を用いて病を癒せるようにと書かれたものです。お腹の痛いときはこの草を使ってこうするよ、とか、ケガして出血したときはこうだよ、というように、自分自身で不調に対処する術が書かれているんです。私はこれを読んで、この知識がどんなに人々を救ったことだろうし、心強かっただろうなと思って感動しました。私は西洋からもたらされたハーブを庭で育てて、暮らしに役立ててきましたが、私自身も何度もハーブに救われてきました。自社のスキンケア商品にもそういう経験が生かされています。そして、もっと多くの人に自分がこれまで培ってきたハーブの知識を伝えたい、と思い「本」という形を選択しました。そのヒントを与えてくれたのが、『救民妙薬集』なんです。
─────なるほど。『救民妙薬集』は1693年に書かれたもので、その当時の知識が私たちに伝わっているという事実を改めて思うと、本という形式の持つ意味合いを感じますね。
ええ。だけどハーブの種類はたくさんあって、いっぺんに紹介すると、ものすごく厚くて重い本になってしまいます。だから、もっと手軽に手に取りやすい方がいいなと思って、あえてミニブックという形にして、数種類ずつハーブを紹介していくことにしたんです。ハンドバッグにいれて移動中などに眺めてもらえるように、A5版であえて薄い作りにしました。現代の人は忙しくて、家でゆっくり本を開く時間もなかなか持てないですからね。忙しい日常の合間で、ふと本を開いたときに癒されてくれたらいいなと思って、ビジュアルデザインにもこだわりました。写真もそうですが、表紙のイラストレーターの大野さんの絵や、ブックデザイナーの十河さんのデザインがそれを叶えてくれたと思っています。本の最初にも書いたのですが、この本が、いつも健やかでいられるためのお守りになれたら、著者としてこんなにうれしいことはありません。
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本著で編集を担当していただきました、3and gardenさまにインタビューしていただきました。
ありがとうございました!